都会の空には、もう星がほとんど見えない。街の光が空を明るくして、頭上に広がっているはずの星座も天の川も、ずっと見えないままになっている。「今夜、自分の街の上に本当は何が見えているのか」を知りたくて、郵便番号を入力するだけで動く星空シミュレーター「星空図譜」を作った。
ブラウザだけで動く自作の Web アプリで、インストールは不要。下のリンクからそのまま開ける。

郵便番号を入れるだけで、その場所の夜空になる
使い方は単純で、画面右側の「観測地」に郵便番号を入力するだけ。裏側では緯度経度を割り出し、地球の自転・公転から恒星時を計算して、その場所・その瞬間に空のどこに何があるかをすべてその場で計算し直している。星座も、有名な恒星も、太陽も月も、日本中どこからでもそれぞれの見え方に切り替わる。
時刻も自由に指定できるので、「明日の夜9時、実家の空はどうなっているか」のような使い方もできる。
太陽と月の動き、月齢まで計算している
昼間の設定にしても、画面は暗いままの夜空を表示し続ける。これは「もし光害と太陽光がなければ見えているはずの星空」を見せるためのシミュレーターだからで、その代わりに太陽自身の位置は空の中にきちんと描かれる。今どちらの方向に太陽が沈もうとしているか、南中がどれくらいの高度かが一目でわかる。
月も同様に、その瞬間の実際の位置に浮かぶ。月齢と輝面比(どれくらい満ちているか)を計算し、欠け際が本当に太陽の方角を向くように輝いている面を描画しているので、三日月や半月の向きにも見た目の説得力がある。
星座はクリックすると、ギリシャ神話が読める
星図の上に浮かぶ星座名や、星座を形づくる星そのものをクリックすると、その星座にまつわるギリシャ神話が開く。オリオン座とさそり座が同じ夜空に決して現れない理由、北斗七星の柄杓の先にまつわる母子の物語、天の川の真ん中を飛ぶ白鳥の伝説——星座線をなぞるだけの図鑑ではなく、星ひとつひとつに物語があるところまで作り込んだ。収録している星座は35個ある。

タイムラプスとスタートレイル
「時の歩み」で 100倍・200倍・300倍速を選べば、実際の空では何時間もかかる星の動きを数秒で見られる。さらに「星の軌跡」モードに切り替えると、星の動きを線として蓄積し、長時間露光の天体写真のような同心円状の軌跡を描く。初期視点を北向きにしてあるのはこのためで、北極星を中心に星々が回転していく様子がよく映える。

操作パネルは右側に、隠すこともできる
観測地・日時・時の歩み・表示の4つの操作パネルは画面右側に縦に並んでいて、タイトルバーをドラッグすれば好きな位置に動かせる。右上のスイッチをオフにすると、パネルごと夜空に溶けるように薄れて消え、星空だけをじっくり眺められる。

見た目は星景写真集を眺めるように
最初はアンティークな星図・天体図をイメージした装飾的なデザインで作っていたが、途中で方向を変えた。目指したいのは資料めいた星図ではなく、星景写真集をめくっているようなロマンチックさだったからだ。羊皮紙や金の装飾をすべて外し、漆黒の空にダークガラスの操作パネルだけが静かに浮かぶ見た目に作り直した。星はきちんと瞬き、地平線に近づくほど大気で減光し、明るい星にはレンズに滲むような光がにじむ。写真としての説得力を、装飾よりも優先した。
技術的なメモ
- 恒星の位置はJ2000 元期の座標を直接埋め込み、太陽と月の位置は低精度の級数計算(誤差はおおむね1°未満)で求めている
- 星座に属さない背景の星も1,600個ほど生成しており、星座線だけの寂しい夜空にならないようにしている
- 郵便番号から緯度経度への変換には HeartRails Geo API を利用している
Web ブラウザだけで完結する、インストール不要の星空シミュレーターとして、下のリンクから自由に試してもらえる。