星空図譜

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ギリシャ神話の星座 35 選 — 星座の名前と物語

星空図譜に収録している星座の一覧です。星図の上で星座をクリックしても、それぞれのギリシャ神話を読むことができます。

オリオン座 (Orion)

海神ポセイドンの子で、並ぶ者なき狩人オリオン。彼は「この世に自分が倒せぬ獣はない」と豪語した。その傲りを戒めるため、大地の女神ガイアは一匹のサソリを放ち、オリオンはその毒針に倒れたという。

以来オリオンはサソリを恐れ、さそり座が東の空へ昇るころ、オリオン座は逃げるように西へ沈む。二つの星座は決して同じ空に姿を見せない。

別の伝えでは、月と狩りの女神アルテミスがオリオンを愛したが、それを快く思わぬ兄アポロンの計略により、女神は自らの矢で彼を射てしまう。嘆いたアルテミスの願いで、オリオンは星々の中に上げられた。三つ星の帯と剣を提げた姿は、冬の夜空でもっとも雄々しい星座である。

おおぐま座 (Ursa Major)

月の女神アルテミスに仕える美しいニンフ、カリスト。大神ゼウスに見初められて子を宿したが、それを知ったゼウスの妃ヘラの怒りに触れ、姿を大熊に変えられてしまった。

歳月が流れ、カリストの息子アルカスは立派な狩人に育った。森で出会った大熊が母とは知らず、弓を引き絞るアルカス。ゼウスは悲劇を避けるため二人をまとめて天に上げ、母を大熊の星座、子を小熊の星座とした。

それでも怒りの収まらぬヘラは、海の神に「あの熊たちを海で休ませてくれるな」と頼んだ。それゆえ、この母子の星座は一年中沈むことなく、北の空を巡り続けるのだという。柄杓の形に並ぶ七つの星は「北斗七星」として名高い。

こぐま座 (Ursa Minor)

カリストの息子アルカスが姿を変えられた小熊。母である大熊とともに天へ上げられ、今も寄り添うように北の空を巡っている。

尾の先に輝くのが北極星(ポラリス)。天の北極のすぐそばにあって、ほとんど動かない。旅人や船乗りは何千年もの間、この星を頼りに北を知った。「迷ったら小熊の尾を探せ」——星のない夜が来るまで、それは世界中の旅の合言葉だった。

カシオペヤ座 (Cassiopeia)

エチオピア王妃カシオペヤは「わたしの娘アンドロメダは、海のニンフたちよりも美しい」と誇った。怒った海神ポセイドンは化け鯨ティアマト(ケートス)を差し向け、国を荒らさせた。

神託は「娘を生贄に捧げよ」と告げ、アンドロメダは海辺の岩に鎖でつながれる。やがて勇者ペルセウスに救われて話は結ばれるが、驕りの罪を問われた王妃は、椅子に縛られたまま天を巡る星座となった。

北の空でWの形に輝くこの星座は、北極星を挟んで北斗七星の反対側にあり、一晩のうちに椅子ごとぐるりと逆さになる。それが王妃への戒めなのだという。

ケフェウス座 (Cepheus)

エチオピアの王ケフェウス。妃カシオペヤの高慢が招いた災いに苦しみ、神託に従って娘アンドロメダを化け鯨への生贄に差し出した悲しき父である。

娘がペルセウスに救われた後、一族はそろって星座になった。とんがり屋根の家のような形をした星座で、王妃カシオペヤ、娘アンドロメダ、婿ペルセウスとともに、秋の北の空に「王家の一族」として並んでいる。

アンドロメダ座 (Andromeda)

エチオピアの王女アンドロメダは、母カシオペヤの高慢の報いとして、海辺の岩に鎖でつながれ、化け鯨ケートスの生贄に捧げられた。

そこへ、メドゥーサ退治の帰り道のペルセウスが天馬に乗って通りかかる。勇者は化け鯨を退治し、王女を救い出して妻とした。二人は末永く幸せに暮らし、死後そろって星座になったという。

この星座に含まれるアンドロメダ銀河は、肉眼で見えるもっとも遠い天体。約250万年前に旅立った光が、いまあなたの目に届く。

ペルセウス座 (Perseus)

ゼウスの子ペルセウスは、見た者を石に変える魔物メドゥーサの首を取るよう命じられた。女神アテナの盾を鏡代わりに、眠るメドゥーサの首を見事に討ち取る。

その帰り道、生贄にされかけていた王女アンドロメダを見つけ、化け鯨を退治して救い出した。星座のペルセウスは、今もメドゥーサの首を手に提げた姿で描かれる。

首にあたる星アルゴルは、数日ごとに明るさが変わる不思議な星。古人はこれを「悪魔の星」と呼び、メドゥーサのまばたきだと恐れた。

ペガスス座 (Pegasus)

ペルセウスがメドゥーサの首を討ったとき、ほとばしる血から生まれた純白の翼を持つ天馬ペガスス。大地を蹴れば泉が湧き、その泉は詩の女神たちの霊感の源になったという。

のちに英雄ベレロポンを乗せ、火を吐く怪物キマイラを退治した。しかしベレロポンが驕って天へ昇ろうとしたとき、ペガススは彼を振り落とし、一頭だけで天に駆け上がって星座になった。

胴体にあたる四つの星は「秋の大四辺形」と呼ばれ、秋の星空の道しるべとなっている。

くじら座 (Cetus)

海神ポセイドンが放った化け鯨ケートス。王妃カシオペヤの高慢を罰するためエチオピアの海岸を荒らし、王女アンドロメダを今にも呑み込もうとしたその時、ペルセウスに退治された。

星座の胸のあたりで輝く星ミラは「不思議な星」の意。約330日の周期で、肉眼でよく見える明るさから見えない暗さまで大きく変わる。規則正しく脈打つこの星は、変光星という星の一族が見つかるきっかけになった。

おうし座 (Taurus)

フェニキアの王女エウロペに恋した大神ゼウスは、雪のように白い牡牛に姿を変えて彼女に近づいた。あまりの美しさと人なつこさに、王女がその背に乗ると、牡牛は突然海へ駆け出し、彼女を乗せたままクレタ島まで泳ぎ渡った。

エウロペはやがてクレタの王妃となり、その名は「ヨーロッパ」の語源になったと伝えられる。星座は海を泳ぐ牡牛の上半身の姿で、赤く輝く一等星アルデバランが牡牛の目にあたる。

肩の上に輝くプレアデス星団は、日本では「すばる」と呼ばれ親しまれてきた七人姉妹の星。顔にあたるV字の星の並びはヒアデス星団である。

ふたご座 (Gemini)

スパルタ王妃レダから生まれた双子、カストルとポルックス。兄カストルは人の子として、弟ポルックスはゼウスの子として生まれたため、弟だけが不死の身体を持っていた。

二人は馬術と拳闘の名手として数々の冒険をともにしたが、ある戦いで兄カストルが命を落とす。嘆き悲しんだポルックスは「自分の不死を分けてほしい」とゼウスに願い、大神はその兄弟愛に打たれて、二人を並べて星座にした。

以来、双子は一日の半分を天上で、半分を冥界で、いつまでも一緒に過ごしているという。並んで輝く二つの星が、二人の頭にあたる。

かに座 (Cancer)

英雄ヘルクレスが沼の大蛇ヒュドラと死闘を繰り広げていたとき、ヘルクレスを憎む女神ヘラは、一匹の大ガニを送り込んだ。カニは健気にもハサミで英雄の足に挑みかかったが、あえなく踏みつぶされてしまった。

ヘラはその忠義をあわれみ、カニを天に上げて星座にしたという。明るい星のない控えめな星座だが、甲羅の中央には「プレセペ星団」と呼ばれる星の集まりがぼんやりと輝き、古人はこれを「飼い葉桶」と呼んだ。

しし座 (Leo)

ネメアの谷に住む人食いライオンは、どんな武器も通らぬ鋼の毛皮を持っていた。英雄ヘルクレスに課された十二の難業、その第一がこのライオン退治である。

矢も棍棒も跳ね返すライオンに、ヘルクレスは素手で組みつき、三日三晩の格闘の末に締め伏せた。ゼウスはこの戦いを称え、ライオンを天に上げて星座にした。

頭からたてがみにかけて「?」を裏返したように並ぶ星々は「ししの大鎌」と呼ばれ、心臓には一等星レグルス——「小さな王」の名を持つ星が輝く。春の宵の南の空に、百獣の王は今も堂々と寝そべっている。

おとめ座 (Virgo)

農業の女神デメテルの娘、ペルセポネ。野で花を摘んでいたところを冥界の王ハデスにさらわれ、冥界の妃となった。娘を失った悲しみでデメテルが仕事を忘れると、大地からは実りが消えた。

ゼウスの仲立ちで、ペルセポネは一年の三分の二を地上で、残りを冥界で過ごすことになった。娘が地上にいる間、大地は花咲き実る——それが春と夏。娘が冥界に下ると、母の悲しみとともに冬が来る。

おとめ座はこの物語の女神の姿とされ、一等星スピカは女神が手にする麦の穂。春の南の空に、季節の巡りそのものを描く星座である。

てんびん座 (Libra)

正義の女神アストライアが手にしていた、人の善悪を量る黄金の天秤。神々と人が地上でともに暮らしていた黄金の時代、女神は天秤で争いを裁いていた。

やがて人の心が荒み、争いが絶えなくなると、神々は次々と地上を去った。最後まで人間を信じて残ったアストライアも、ついに天へ帰り、彼女はおとめ座に、その天秤はてんびん座になったと伝えられる。天秤の皿が傾いたような星の並びが、秋分のころの太陽の通り道にかかっている。

さそり座 (Scorpius)

「この世に俺の倒せぬ獣はない」と豪語した狩人オリオン。その傲りを罰するため、大地の女神ガイアが放ったのが一匹のサソリだった。サソリは狩人のかかとを刺し、不死身を誇った英雄はあっけなく倒れた。

この手柄によりサソリは天に上げられ、夏の南の空に大きくS字を描く星座となった。心臓には赤い一等星アンタレス——「火星に対抗する者」の名を持つ赤い巨星が輝く。日本では釣り針に見立てて「魚釣り星」とも呼ばれた。

今もオリオン座はサソリを恐れ、さそり座が東から昇るとき、西の地平へ逃げるように沈んでいく。

いて座 (Sagittarius)

上半身は人、下半身は馬——半人半馬のケンタウロス族の賢者ケイロン。乱暴者の多い一族にあって、彼だけは音楽・医術・武芸に通じ、アキレウスやアスクレピオスなど数多の英雄を育てた偉大な師であった。

あるときヘルクレスの毒矢が誤ってケイロンを貫いた。不死の身ゆえ死ぬこともできず、毒の苦しみに永遠に耐えねばならなくなった賢者は、自らの不死を返上して安らかに逝くことを選んだ。

ゼウスはその高潔な生涯を悼み、弓を引くその姿を星座にした。南斗六星を含む星の並びは、西洋では「ティーポット」の愛称でも親しまれる。天の川がもっとも濃く輝く、銀河系の中心方向にある星座である。

やぎ座 (Capricornus)

牧神パンは、上半身が人で下半身が山羊の陽気な神。ある日、神々がナイル川のほとりで宴を開いていると、恐ろしい怪物テュポンが襲いかかってきた。

神々は思い思いの動物に化けて逃げ出した。パンも慌てて魚に変身して川へ飛び込んだが、慌てすぎて上半身が山羊のまま、下半身だけが魚という珍妙な姿になってしまった。

その滑稽な姿に大笑いしたゼウスが、記念にそのまま星座にしたのがやぎ座だという。逆三角形に並ぶ星々が、夏の終わりの南の空に浮かんでいる。

みずがめ座 (Aquarius)

トロイアの王子ガニュメデスは、人間の中でもっとも美しい少年と謳われた。その美しさに目を留めた大神ゼウスは、大鷲に姿を変えて少年を天へさらい、神々の宴で神酒ネクタルを注ぐ給仕に任じた。

星座は、水がめから尽きせぬ水を注ぐ少年の姿。かめから流れ出た水は、南隣のみなみのうお座の口へと注がれている。少年をさらった大鷲は、わし座になったと伝えられる。

うお座 (Pisces)

美の女神アフロディテとその子エロスが、ユーフラテス川のほとりを歩いていたとき、突如として怪物テュポンが現れた。二人は魚に姿を変えて川へ逃げ込んだが、離ればなれにならぬよう、互いの尾をリボンで結び合った。

うお座は、リボンで結ばれた二匹の魚の姿。星座の結び目にあたる星はアルレシャ——アラビア語で「ひも」を意味する。明るい星こそないが、秋の夜空に大きくV字を描く、愛の女神の星座である。

おひつじ座 (Aries)

継母に命を狙われた王子プリクソスと王女ヘレの兄妹を救うため、伝令神ヘルメスが遣わした空飛ぶ金毛の牡羊。兄妹を背に乗せ、海を越えて東の国コルキスへと飛んだ。

途中、妹ヘレは海に落ちてしまったが、兄は無事にたどり着き、感謝のしるしとして牡羊を神に捧げ、その金の毛皮を聖なる森に祀った。この「金羊毛」こそ、のちに英雄イアソンとアルゴ号の勇士たちが探し求めた宝である。

牡羊自身は天に上げられ、春の星座の先頭を行くおひつじ座となった。

ぎょしゃ座 (Auriga)

アテネの王エリクトニオスは、生まれつき足が不自由だったが、それを知恵で補い、四頭立ての戦車を発明して見事に乗りこなした。女神アテナに育てられた彼は、良き王として国を治めたという。

ゼウスはその工夫と勇気を称え、手綱を握る御者の姿を星座にした。五角形に並ぶ星々の中でひときわ明るいのが一等星カペラ——「小さな牝山羊」の意で、御者が抱きかかえる山羊の姿とされる。冬の天頂近くに輝く、北天で三番目に明るい星である。

うしかい座 (Boötes)

北の空を巡る大熊(おおぐま座)を、二匹の猟犬を連れて追い続ける牛飼い。その正体は、大熊にされた母カリストを追う息子アルカスの姿だともいわれる。

ひときわ明るく輝くオレンジ色の一等星アークトゥルスは、ギリシャ語で「熊の番人」の意。日本では麦の刈り入れ時に南の空高く昇ることから「麦星」と呼ばれ、親しまれてきた。北斗七星の柄のカーブをそのまま延ばすとこの星に行き着き、さらに延ばすとおとめ座のスピカへ——「春の大曲線」である。

かんむり座 (Corona Borealis)

クレタ島の王女アリアドネは、迷宮の怪物退治に来た英雄テセウスに恋をし、糸玉の知恵を授けて彼を勝利に導いた。しかし帰りの船旅の途中、テセウスは眠る王女をナクソス島に置き去りにしてしまう。

目覚めて泣き崩れるアリアドネの前に現れたのが、酒の神ディオニュソスだった。神は彼女を妃に迎え、婚礼の贈り物として宝石をちりばめた黄金の冠を贈った。

アリアドネの死後、神は冠を天に投げ上げ、七つの星の小さな半円——かんむり座になった。悲しみの後の幸福を象徴する、春の夜のささやかな宝冠である。

ヘルクレス座 (Hercules)

ゼウスと人間の女の間に生まれた大英雄ヘラクレス(ヘルクレス)。女神ヘラの憎しみを受け、償いとして十二の難業を課された。ネメアの獅子退治、九つ頭の大蛇ヒュドラ退治、地獄の番犬ケルベロスの生け捕り——どれも人の身に余る難業を、彼はすべてやり遂げた。

数奇な生涯の果てに毒の衣で命を落とすが、ゼウスはその魂を天に迎え、神々の列に加えた。星座は棍棒を振り上げて膝をつく姿で、頭を南に向けた逆さの格好で夏の天頂近くに描かれる。胴体の四つの星は「ヘルクレスの要石」と呼ばれる。

こと座 (Lyra)

音楽の名手オルフェウスの竪琴。彼が奏でれば、猛獣は伏し、木々は枝を垂れ、岩さえも聞き入ったという。

最愛の妻エウリュディケを毒蛇に奪われたオルフェウスは、竪琴ひとつで冥界へ下り、その調べで冥界の王ハデスの心を動かした。「地上に出るまで決して振り返るな」——だが出口を目前に、彼は思わず振り返り、妻は永遠に冥界へと消えた。

失意のうちに世を去ったオルフェウスの竪琴を、ゼウスは天に上げて星座にした。青白く輝く一等星ベガは、七夕の織姫星として日本でもっとも親しまれている星である。

はくちょう座 (Cygnus)

大神ゼウスがスパルタ王妃レダのもとへ通うとき、その姿を隠すために化けたという白鳥。この逢瀬から生まれたのが、ふたご座のカストルとポルックス、そして絶世の美女ヘレネである。

別の伝えでは、親友パエトンが太陽の戦車から墜落して川に沈んだとき、その亡骸を探して何度も水に潜った友キュクノスが、あわれんだ神々によって白鳥に変えられたのだという。

尾にあたる一等星デネブと、十字に広げた翼。天の川の真ん中を南へ飛ぶその姿は「北十字」とも呼ばれる。くちばしの星アルビレオは、望遠鏡で見ると黄玉と青玉が寄り添う、天上の宝石と名高い二重星である。

わし座 (Aquila)

大神ゼウスの使いを務める大鷲。ゼウスの雷霆(いかずち)を運び、ときには神自身の化身ともなった。トロイアの美少年ガニュメデス(みずがめ座)を天へさらったのも、この鷲だと伝えられる。

胸に輝く一等星アルタイルは、七夕の彦星(牽牛星)。天の川を挟んで、こと座のベガ(織姫星)と向かい合う。アルタイル、ベガ、そしてはくちょう座のデネブを結んだ大きな三角形は「夏の大三角」と呼ばれ、夏の星空案内の出発点となっている。

へびつかい座 (Ophiuchus)

医術の神アスクレピオス。半人半馬の賢者ケイロン(いて座)に医術を学び、ついには死者すら蘇らせる域に達した。

しかし死者が生き返っては世界の理が崩れる。冥界の王ハデスの訴えを聞いたゼウスは、やむなく雷霆でアスクレピオスを打った。そしてその医術の功績を称え、大蛇を手にした姿を星座として天に上げた。

蛇は脱皮することから、古来「再生」と「医術」の象徴。アスクレピオスの蛇の巻きついた杖は、今も世界中で医の紋章として使われている。夏の南の空、さそり座の真上に大きく広がる星座である。

おおいぬ座 (Canis Major)

狩人オリオンが連れていた猟犬。主人とともに天に上げられ、冬の夜空でオリオン座の後ろに付き従っている。一説には、どんな獲物も逃さぬ神犬ライラプスの姿だともいう。

首元に輝くシリウスは、太陽を除けば全天でもっとも明るい恒星。ギリシャ語で「焼き焦がすもの」を意味し、古代エジプトではこの星の夜明け前の出現がナイル川の氾濫と暦の始まりを告げた。青白いその輝きは、光害の中でも都会の空に見つけられる数少ない星のひとつである。

こいぬ座 (Canis Minor)

オリオンに従うもう一匹の小さな猟犬。あるいは、酒の神ディオニュソスに仕えた忠犬マイラの姿ともいわれる。主人イカリオスが非業の死を遂げたとき、マイラはその亡骸を見つけ出し、嘆きのあまり後を追った。神々はその忠義をあわれみ、天に上げたという。

一等星プロキオンはギリシャ語で「犬に先立つもの」。おおいぬ座のシリウスよりひと足早く昇ることからその名がついた。シリウス、プロキオン、ベテルギウスの三つの一等星が描く正三角形は「冬の大三角」と呼ばれる。

うみへび座 (Hydra)

レルネの沼に棲む九つ頭の大蛇ヒュドラ。頭をひとつ斬り落とせば、そこから二つの頭が生えてくる不死身の怪物である。ヘルクレスの十二の難業の第二がこの怪物退治だった。

ヘルクレスは甥に松明を持たせ、頭を斬るそばから傷口を焼いて再生を封じ、ついに不死の頭を岩の下に封じ込めた。怪物は女神ヘラによって天に上げられ、全天でもっとも大きな星座になった。

頭から尾まで全天の四分の一を横切る長大な星座で、心臓にあたる星アルファルドは「孤独なもの」の意。周りに明るい星がなく、ぽつんと赤く輝いている。

からす座 (Corvus)

からすはかつて、銀色の羽を持つ太陽神アポロンの使いだった。あるとき水汲みを命じられたからすは、イチジクの実が熟すのを待って道草を食い、あげくに「大蛇に邪魔された」と嘘の言い訳をした。

すべてを見通す神に嘘は通じない。怒ったアポロンはからすの羽を黒く変え、水がめ(コップ座)と大蛇(うみへび座)とともに天に縛りつけた。からす座は今も、うみへび座の背に乗ったまま、届かない水がめを眺めているという。春の南の空に浮かぶ小さな四辺形で、探しやすい星座である。

いるか座 (Delphinus)

海神ポセイドンは海のニンフ、アンピトリテに求婚したが、彼女は逃げて海の果てに隠れてしまった。そこで一頭のイルカが使者に立ち、言葉を尽くして説得し、ついに二人の婚礼をまとめ上げた。

ポセイドンはこの功労者を天に上げ、小さくも愛らしい星座にした。また、歌人アリオンが海賊に襲われたとき、その歌声に聞き惚れて彼を背に乗せて救ったイルカの姿だともいわれる。夏の大三角のそば、菱形に並ぶ星々がイルカの胴体である。

みなみのうお座 (Piscis Austrinus)

みずがめ座の少年ガニュメデスが注ぐ水を、大きく口を開けて飲み続ける魚。うお座の二匹の魚の親だともいわれる。

口元に輝く一等星フォーマルハウトは、アラビア語で「魚の口」の意。秋の宵の南の低い空に、周りに明るい星もなくただ一つ輝くことから、日本では「南のひとつ星」と呼ばれた。秋の夜空でただひとつの一等星である。