4 月 22 日、ヴァンサバライク本家の poncle が新作『Vampire Crawlers: The Turbo Wildcard from Vampire Survivors』を Steam にリリースしました。1200 円。発売直後でレビュー 1366 件中 98% が好評、最高同接 2 万 1147 人、Steam 週間売上 3 位。「圧倒的に好評」がついた状態でスタート。
面白いのは、これが「Vampire Survivors の続編」ではなく、本家の世界観・敵・武器を流用しつつ、コアのプレイ感を「デッキ構築型ローグライト」に入れ替えた作品だということ。同じガワで中身が完全に別物になっています。
このリリースを見て、ヴァンサバライクというカテゴリがいよいよ「ゲーム」じゃなくて「フォーマット」として確立してきた感じがあります。あと、デッキ構築との重なりはどこにあるんだろう、という点が個人的に気になりました。それぞれ少し書いてみます。
『Vampire Crawlers』が変えたもの
本家『Vampire Survivors』は、自動攻撃を見守りながら経験値とアイテムで武器を伸ばす、いわゆる「オートシューター」でした。プレイヤーが操作するのは移動だけで、戦闘は半分くらい眺めるもの。
『Vampire Crawlers』はそこを完全に切り替えてきます。AUTOMATON の記事によれば:
- カードそれぞれに必要マナが設定されている
- マナの小さい順にカードを使うと「コンボ」が成立する
- コンボが繋がると与ダメージが 2 倍、3 倍と増える
本家のヴァンサバが「武器の自動更新を見守るプレイ」だったのに対して、Vampire Crawlers は「毎ターン手札を最適化する能動的プレイ」になっています。同じ世界・同じ敵を使いながら、コア体験は全く別物。
そして数字が示すように、これがちゃんと売れている。Steam 週間 3 位・同接 2 万。本家がガワだけ流用して中身を抜本的に変えても、プレイヤーはついてくる、という事実が出ました。
「ヴァンサバライク」はもうジャンルじゃなくフォーマット
個人的にここ数年のヴァンサバライクを眺めていて、進化を 3 段階に整理したいと思っています。
第 1 世代:本家フォーマットの量産期。Brotato、Boneraiser Minions、Halls of Torment、20 Minutes Till Dawn、HoloCure。このあたりは「画面いっぱいの敵 × 自動攻撃 × ラン中の武器強化 × 30 分」という骨格をそのまま共有していました。本家のクローン的な始まり方をして、ガワが似ているから雰囲気は維持できる。
第 2 世代:別ジャンルとの混合期。20XX や 30XX みたいに RPG / メトロイドヴァニア寄りにしたもの。Halls of Torment はディアブロ風の見下ろし視点に変えた。『Mewgenics』はターン制戦術 RPG にローグライト的なエッセンスを入れて 2026 年序盤の AA ヒットになった。「ヴァンサバライク的なエッセンス」と「他ジャンル」をくっつけ始めた段階。
第 3 世代(今ここ):本家自身が中身を入れ替える。Vampire Crawlers がデッキ構築に行ったのは、量産期がほぼ終わって「同じガワで何ができるか」を本家自身が探すフェーズに入った、と読めるんじゃないかと思います。
この流れを見ていて感じるのは、「ヴァンサバライク」というのはもう特定のゲーム性を指してはいない、ということ。フォーマットの総称になりつつあります。具体的には:
- 30 分前後で完結する 1 ラン
- ラン中の ランダムな ローグライト的リソース獲得
- 画面が敵で埋まる視覚的気持ちよさ
- 死んだら最初から、複数回のラン前提
- キャラ・武器・パーク等のメタ進行
このパッケージが「ヴァンサバライク」の輪郭で、中身(戦闘システム、視点、舞台、物語)はかなりの自由度で入れ替え可能に見えます。Vampire Crawlers はそれを本家自身が試した形になりました。
ヴァンサバライクとデッキ構築、重なる部分はどこか
本家が次の中身として「デッキ構築」を選んだ件について、何が重なっていたのかを考えてみます。これはあくまで観察と推測の話で、本家の意図を断定するものではありません。ただ、両者がうまく組み合わさって見える要素はいくつかあるな、という整理。
① 30 分ランとデッキ構築の時間感覚
『Slay the Spire』のような本格デッキ構築ローグライトは、1 ランが 1〜2 時間。じっくりカードを選び、デッキを練り上げて、最後のボスに挑む。プレイ密度が高い分、1 ランがそれなりに重い。
一方、ヴァンサバライクは 30 分前後。「軽く回せるデッキ構築ローグライト」という空白がそこにあったように見えます。Slay the Spire を遊びたいけど時間がないプレイヤー層に対して、ヴァンサバライク的な短さは届きやすいかもしれない。
② 「武器が自動で増える」と「カードが手札に来る」
本家ヴァンサバの面白さの一つは、ラン中にレベルアップで武器が増えていって、最終的に画面が攻撃エフェクトで埋まる気持ちよさです。「自分が選択した強化が、視覚的に積み重なって見える」フィードバックループ。
デッキ構築にも、これと近い構造があるように思います。デッキにカードを足していくと、毎ターンの選択肢が増え、コンボが繋がるようになり、与ダメージが視覚的に膨らむ。「自分で組んだ強化が時間とともに開花する」という感情の動き方は、両者で共通する部分がありそう。
そう考えると、本家のプレイヤーから見ても、デッキ構築への移行はそこまで大きな違和感を伴わない可能性がある。これは断定じゃなくて、「そう感じる人が多いかもしれない」くらいの話ですが。
③ ローグライトの「ランダムな選択肢提示」とデッキビルドの噛み合い
ヴァンサバライクがローグライトを骨格に持つ理由の一つは、「ラン中にランダムで提示される選択肢から、その場でビルドを組んでいく」面白さでしょう。Brotato のレベルアップ画面、ヴァンサバの武器選択画面、すべてこの系統。
デッキ構築ローグライトもまた、ランダム提示型のビルド選択をベースに置いているジャンルです。Slay the Spire の「3 枚から 1 枚選ぶ」あの感覚は、構造的にはヴァンサバライクの武器選択に近い。同じ枠組みの上に、別の素材を載せ替えていると捉えると、両者の組み合わせは想像しやすい。
④ 共通する根:「自分でビルドを組みたい」欲求
ヴァンサバライクが広がった理由も、デッキ構築ローグライトが定着した理由も、根っこには 「自分でビルドを組んで、それが噛み合う瞬間を見たい」 という、ある種共通したプレイヤー欲求があるんじゃないか、と感じています。
ヴァンサバはそれを「武器とパッシブの組み合わせ」で見せていた。Slay the Spire は「カードとレリックの組み合わせ」で見せていた。Vampire Crawlers は両者の文法を、ヴァンサバライクのフォーマット上で混ぜてきた、という見方ができます。
これも断定はできません。プレイヤーがそう感じているか、本家がそういう設計意図を持っていたか、は外から確かめようがない。ただ、結果として商業的にうまく着地している、という事実だけは数字から読み取れます。
このフォーマット化が後発に意味すること
「ヴァンサバライク」がフォーマットとして広がってきたことで、後発の個人開発者にとって何が変わったか。これも観察ベースの推測ですが、3 つくらい挙げられそう。
1 つ目。「ヴァンサバライク」と打ち出すだけでは、もう差別化として機能しにくくなってきた。第 1 世代の量産期は、フォーマットを真似るだけで一定の興味を引けた時期があった気がしますが、今は埋もれやすくなっている可能性が高い。中に何を入れるか、どこをずらすかを明示する必要が増している、と思います。
2 つ目。逆に、フォーマットの上に何を載せても成立する余地が広がっている、ように見えます。本家がデッキ構築に行ったように、戦術 RPG(Mewgenics)、メトロイドヴァニア(30XX)、リズムゲーム、ホラー、SLG、何でも乗る前提で考えていい段階に来ているのかもしれない。クロスジャンルを試す土俵が、ヴァンサバライクというフォーマットによって整備されてきた、と見ることはできそうです。
3 つ目。ジャンル全体の関心は本家が引き上げてくれる。Vampire Crawlers の同接 2 万は、後続のヴァンサバライクすべてにとって追い風になる検索ボリュームを生む。ジャンルが死んでなくて、むしろ進化期にあることが見えている状態は、後発にとっては悪くない環境です。
まとめ
『Vampire Crawlers』を見て個人的に印象に残ったのは、ヴァンサバライクが「ジャンル」から「フォーマット」へと位置づけが変わってきている、ということでした。
そしてデッキ構築との組み合わせは、両者がいくつかの構造を共有しているからこそ違和感なく見える、という側面はあるかもしれません。ただ「必然だった」「これしかなかった」と言い切るほどの根拠は、外からは見えません。あくまで「相性が見えやすい組み合わせの一つ」として読むのが、個人的には納得しやすいです。
後続のヴァンサバライクを作る側にとっては、この出来事は「フォーマットの上に何を載せるか」を考え直すきっかけになりそうです。中に入れる素材が、これからどう多様化していくのか、しばらく見届けたいと思います。
アイキャッチ画像: Steam ストアページ © poncle
ソース: AUTOMATON: 『Vampire Crawlers: The Turbo Wildcard from Vampire Survivors』が発売、好調スタート / Steam ストア(Vampire Crawlers)
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